以下の記事の続きです。
sekasukuでのプロジェクトはこちら。
前回はクラウド(雲、対立解消図)まで作りました。
クラウドは、こんなやつでした。
「こういう目的があって、ホントはこうしたいんだけど、ある理由があってこうなっちゃってるんだよね。そのせいで悪いことが起きてるんだ。」
というジレンマを図で表したものがクラウド(対立解消図)です。
作りかたは、これでした。
TOC思考プロセスのなかでも、もっとも重要なツリーだと言われています。
このTOC思考プロセスのクラウド(対立解消図)だけで、世界にある7割がたの問題が解決するんじゃないかと思います。(シマダ調べ)
前回までで作ったクラウドを再掲します。
読みかたは、
「A10 会社を発展させる」ためには「B10 出費を抑えなくてはならない」
「B10 出費を抑える」ためには「D10 近くの工場を借りてはならない」
「D10 近くの工場を借りない」ことによって「UDE80 自社を発展させるための機械設備設置用の面積が不足している」
その一方で
「A10 会社を発展させる」ためには「C10 機械設備を増やしていかなければならない」
「C10 機械設備を増やしていく」ためには「D’10 近くの工場を借りなければならない」
「D10 近くの工場を借りない」ことと「D’10 近くの工場を借りる」ことは対立していて、両立できない。
という感じです。
ただ、理由の詳細が知りたいですよね。
「会社を発展させるためには出費を抑えなくてはならない」というのは一見もっともなことを言っているように思えますが、すっごいキャッシュを持っている人にとっては「え?そうか?」と思う場合もあると思います。
読む人の立場や背景によってクラウドの意味が異なってはいけないので、このジレンマを抱えている人がどういう理由でジレンマに陥っているのかを明確にしないといけません。
そこで登場するのが、「前提条件」と呼ばれる理由説明です。
仮定、アサンプションとも呼ばれます。
前提条件(仮定、アサンプション)の書きかたは、ツリーを拡大すると灰色のマルが出るので、それをクリックしてコメントボックスを出します。
出てきたコメントボックスに「前提条件」と呼ばれる理由を書いていきます。
「出費を抑える」ためには「近くの工場を借りない」必要がある。
なぜなら「◯#※=?%!*+λ&」の「◯#※=?%!*+λ&」の部分です。
何言ってるか分からない感じではなく、ちゃんと理由を書きます。
今回の場合だと、プロジェクト概要にも書いてありますが「工場を増やすと15万円/月の家賃や設備の移動などで出費がとても増える。」というところが理由になります。
プロジェクト概要での文章は家賃と設備移動費用の2つの理由がつながっていますが、クラウドに「前提条件(仮定、アサンプション)」として書く場合は、はっきりさせるために1つずつ分けて書きます。
- 「出費を抑える」ためには「近くの工場を借りてはならない」
なぜなら「工場を借りると15万円/月の家賃の出費が増える」からである。 - 「出費を抑える」ためには「近くの工場を借りてなはらない」
なぜなら「設備の移動で出費がとても増える(1台50万円とか)」からである。
という感じで、思いつく限りの言いわけを並べたてます。
このB10とD10の間に出てくる言いわけが、本来なら取りたい行動ラインに踏み切れず、現在の行動ラインになっているネガティブな理由です。
反対に、C10とD’10の間に出てくる言いわけが、本来なら取りたい行動ラインを後押しするポジティブな理由です。
「会社を発展させる」という共通目標がありながら、それぞれの行動の理由がどちらも一理あって、ジレンマに陥っています。
本来なら取りたい行動ラインに踏み切れないネガティブな理由となっているB10とD10の間の言いわけ部分は、とくにしっかりと充実させなくてはいけません。
ここをしっかりと書いたら、つづいて他の部分にも「前提条件」を同じように考えて書いていきます。
このように、理由となる前提条件をしっかり書き込んでいくことで立場や背景が違う人が読んでも、ジレンマに陥っている人の背景がちゃんと見えてくるようになり、ツリーを見て話をするときにコミュニケーションのすれ違いが無くなってきます。
シマダ機工の立場で、前提条件(仮定、アサンプション)をあるていど書いた状態がこちら。
代表的なものを読んでみましょう。
- 「A10 会社を発展させる」 ためには 「B10 出費を抑えなくてはならない」
なぜなら 「粗利MQ > 固定費F となっていないと利益がないため会社の発展はありえない」
それはそうですよね。利益がないと投資も呼び込めないし、借り入れで会社を発展させても利益が無ければすぐに限界が訪れてしまいます。
- 「B10 出費を抑える」 ためには 「D10 近くの工場を借りてはならない」
なぜなら 「工場を借りると15万円/月の家賃の出費が増える」
なぜなら 「前回のリーマンショック不景気から10年で、また景気が悪くなりそうな予感がする」
なぜなら 「借りても当分は使わないので、出費だけが増える感じ」
なぜなら 「今の本社工場で設備を増やさずともTOC思考プロセスを使って売上を増やす方法を模索するほうが良いのではないか。それがTOCでしょ。」
ネガティブな理由だけど、確かにそうです。
先行き不安だし、あまり固定費は増やしたくない。
しかも最後の「それがTOCでしょ」は自分で考えていながらパンチ力がある。
そう、わたしはTOC使いなんだから、投資は増やさずスループットを上げるなんてお手のもののはず。
そしてこの前提条件(仮定、アサンプション)があるため
- 「D10 近くの工場を借りてはならない」ことによって「UDE80 自社を発展させるための機械設備設置用の面積が不足している」
というUDEが発生している事実があるんですよね。
その一方で
- 「A10 会社を発展させる」 ためには 「C10 機械設備を増やしていかなければならない」
なぜなら「現在のシマダ機工は「賃加工」というビジネスモデルなので、会社を発展させるためには粗利MQを上げる必要があり、それは設備の数に比例すると考えている」
そうなんです。粗利MQは機械設備の台数に比例するんです。これは現在の鉄工所で賃加工というビジネスモデルでは当然といえば当然なのです。
- 「C10 機械設備を増やしていく」 ためには 「D’10 近くの工場を借りなければならない」
なぜなら「もうすでに本社工場は面積が限界で機械設備が1台たりとも増やせない」
なぜなら「いま確保しないと近場で天井クレーン付きでこれほど家賃が安い物件はなかなか見つけられないから、当面使わなくても確保しておくべき」
なぜなら「社員が増えるのが確定しているので設備を増やさざるを得ない。そうなると面積も増やさないといけない。」
なぜなら「2019年3月から17万円/月のリースが終わるので、第2工場の家賃分の支払いが浮く」
ポジティブな理由のほうです。うーん、たしかに今すぐに使わないからと言ってこの物件を逃すと、将来の発展に響きそう。。。工場ってのは必要に迫られてから準備してたら間に合わないものだし。
- 「近くの工場を借りない」ことと「近くの工場を借りる」ことは対立していて、両立できない。
なぜなら「借りるのと借りないのは両立できない」
これは最後の確認用です。本当に対立していて両立できないのだと確認します。
たまに両立できてしまうやつで悩んでる場合があり、それを見つけるとジレンマではないので即座に解決します。
さて、「前提条件(仮定、アサンプション)」と呼ばれる理由がだいぶ出揃いました。
まだいくらでも追加して良いのですが、ひとまずこれでほとんど状況が分かると思います。
「前提条件(仮定、アサンプション)」を出すコツとしては
- 自分、当事者では疑問の余地もないほど当たり前だと思われていること(そんなの常識でしょ!?というようなこと)
- 自分、当事者では当たり前、当然だと思っていて存在に気が付かないような条件(そんなの考えれば分かるでしょ!?というようなこと)
というような当たり前だと思われていることにこそ、「本当にそうなの?」と疑問の目を向けます。
ところで、理由を読んでみると「イヤまてよ、こうすればどう?」みたいな理由に対するアドバイスのようなものが思い浮かんできませんか?
たとえば、
「A10 会社を発展させる」 ためには 「C10 機械設備を増やしていかなければならない」
なぜなら「現在のシマダ機工は「賃加工」というビジネスモデルなので、会社を発展させるためには粗利MQを上げる必要があり、それは設備の数に比例すると考えている」
についてですが、「そのビジネスモデルにこだわる必要あるの?そのビジネスモデルは神からさずかった天啓ですか?逆らっちゃだめなんですか?現在のリソースを使って別のことやっても全然良いんじゃないですか?」なんて言っちゃっても良いわけです。
このアドバイスのようなものが「インジェクション」です。
他にも言いわけに対して「言い訳すんじゃねぇ。こうすりゃ出来るだろ。甘えてんじゃねぇ。」と言いたいところがいっぱいありますよね?
さて、面白くなってまいりました。インジェクション。
つづく。
本連載の記事リストは、以下になります。
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