TOC思考プロセスとの出会い編 (1) 三菱重工時代に困難に直面


 

読者のみなさまはご存知かどうか分かりませんが、私は シマダ機工有限会社 という機械加工屋さんの経営者です。

その機械加工屋さんがなぜ、唐突に ソーシャル問題解決システム sekasuku というものを発表したか、なんでそんなにTOC思考プロセスが好きなのかについて、たぶんまだ誰にも言っていませんでした。

誰かに聞かれた時のための備忘録として書いておこうと思います。

時は西暦2002年ごろ、わたしは三菱重工の名古屋誘導推進システムで、民需大型航空エンジンの部品製造の生産技術者をしていました。

24歳ごろです。

当時は主にPW4000エンジンのケース部品(ファンケース、高圧圧縮器ケース、燃焼器ケース)などの生産技術を担当していました。

↓このエンジンの断面図の中に、担当していた部品がチラホラ見えます。

 

こっちは退職前の2006年(28歳)頃に担当していた部品とか。

http://xn--qckn4dud5e146u9qq.jp/article/48664749.html

不良率が高すぎて傾きかけたプロジェクトを引き継いで、なんとか改善して軌道に載せたりして、入社4年目でソコソコの実績をもっていました。

「性格は悪いけど、仕事はできるよね」

というのが、当時の私を表す端的な一言です。

生産現場からしてみると、性格が良くても仕事ができない人よりは性格が悪くても仕事ができる人のほうが有用なので、わたしは現場からは支持されていました。

 

その4年目くらいのとき、ちょっとした事件がおきます。

https://www.flightglobal.com/news/articles/pw4000-operators-face-surge-inspection-48971/

あれ、この記事1999年だわ。まあいいや。

 

PW4000の94inchファンのモデルでサージが発生し、飛行機が離陸しているときに4個搭載されているエンジンのうち、4個ともすべて停止するという、まあ生きているうちには遭遇したくないようなヒヤリハット事件が起きました。(らしいです。その後、その飛行機がどうなったか聞いてない)

飛行機の離陸というのは、エンジンパワーが最大に必要な時です。
ぜったい止まってほしくない時に限って止まるとか、まるでバターを塗ったトーストのバター面が 下を向いてカーペットに(略

この1999年の時点の記事は、たまに4個中1個くらい止まるとかだったので、現状把握のための検査をスタートしたという記事ですね。

この記事に書いてある以上のことは内部情報なのでアレなのですが、94inchモデルにだけ起こる不具合で、原因は高圧圧縮機(High Pressure Compressor (HPC))の構造がちょっとアレだと言うことが特定されました。

このモデルよりあとに開発されたエンジンのHPCはステータ側の構造が異なり、コンプレッサーブレードの段ごとに最適なチップクリアランスを取ることが出来るのでサージの不具合が起きないとのことでした。

この不具合をかかえたエンジンは何気にベストセラーで、世界に2,000台くらい出回っていました。

事態を重く見たと言うか、FAAにいい加減にしろと言われたエンジンメーカーのPratt&Whitneyは

「HPCのところを全部リコールで部品交換しますけど、なにか?」

と言ってリコールを決めたのでした。

 

 

「、、、それってわたしの担当部品のことですね」

説明会議にわたしが呼ばれて設計者から説明を受けたあと時に、あんまり理解しないまま私が発した言葉です。

たぶん三菱重工の設計の人も、Pratt&Whitneyの人が言ったことを劣化させて適当に説明してただけなので、あとからP&Wから来た資料を見るまで事情が理解できていなかったと思われますけど。

最初は不良品で呼びつけられたのかと思いましたが、設計の問題でした。

いままで1つの部品で出来ていたものがコンプレッサーの段ごとに部品が分かれ、他社が作っていた部分も取り込んで7つの部品になりました。

新しい設計の内容は、つまりは問題が起きていない新モデルのエンジンっぽくするということでした。

こういう部品に設計変更して、いっぱい作るんで生産技術でなんとかしてくれと相談されていたのでした。

通常の新品エンジンの分を生産しつつ、リコール用、オーバーホール用の部品も生産しなければいけないということで、生産量はおおざっぱに10倍くらいになりました。

 

「これを生産設備を増やさずに、既存の設備で生産量10倍にしてみようか」

 

とか誰かがかるく言っちゃったりして、当時に流行っていたプロジェクトXの「風の中のすーばるー」の曲が私の頭のなかを流れ始めたのでした。

 

つづく。

 

このシリーズの記事リストはこちら。

・TOC思考プロセスとの出会い編 (1) 三菱重工時代に困難に直面
・TOC思考プロセスとの出会い編 (2) 三菱重工時代に研修でTOCをチラ見する
・TOC思考プロセスとの出会い編 (3) シマダ、会社でTOCを使うってよ
・TOC思考プロセスとの出会い編 (4) 平社員がTOCを会社で使ってみる件
・TOC思考プロセスとの出会い編 (5) みんなで頑張る

 

 

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